紀北の旅 作品集 紀北の旅 作品集 紀北の旅 作品集
紀北の旅 紀行文2005
尾鷲を旅すれば
二宮 春将

八鬼山 私は男のくせに恋愛小説が好きである。小学生の頃から姉の読みふるした小説を読むうちに、自分でも書いて見たくなった。しかし、発表する場所がない。いろいろ考えたあげく、友達の女の子の名前を借りて、少女雑誌に投稿するようになったのである。時に雑誌に掲載されると有頂天になったものだ。高校生の頃、私は恋愛とは、男の方から言い寄るのが普通なのだろうかと、ひどく疑問に思うようになった。というのが女性の方から男性にアプローチするケースを数多く見たからである。大学受験の日本史の勉強を兼ねて愛のルーツを探ったところ、海女族の日本定住に行き着いたのである。「これは三重に行かなくては」
 私の大きな課題となった。三重は昔の風習を残しているのだ。恋愛のルーツを探るにはもってこいである。東京の学校に進学してから帰省の途中に私は三重に寄ることにした。海女は志摩が有名であるが、私は尾鷲市に注目した。
 この場所は三重県南部、熊野灘に面した沿岸地域で、太平洋に面している場所はリアス式海岸になっている。
「二千年以上前に、女系の集団が住み着いたに違いない」私は確信した。
「若い女性が気に入った男を見染め、激しい愛の交歓をしたのか」
 この思いで私の心はわくわくした。友人とこの事について酒を酌み交わし、夜明まで激論した。朝はやく起きての八鬼山越えは涙が出るほど辛かったが、若さで乗り切ったのだった。恋愛のルーツを探った貴重な旅である。

紀行文作品集2004 紀行文作品集2005 紀行文作品集2006
作品の版権はすべて「もてなしのさとづくり会議 人づくり部会」帰属しています。