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紀北の旅 紀行文2004
熊野古道「始神峠」を歩いて
土屋 勲

始神峠  先日 かねがね一度は挑戦してみたいと思
っていた熊野古道を歩く機会を得た。
 脚に自信がなく踏ん切りがつかなかったが、たまたま初心者向けに「始神峠」ハイキング参加者を募っているのを知り、参加した。
 三野瀬の登り口で「語り部」さんから熊野古道について丁寧な説明を受け、峠を目指して登り始めた。走り根の多い古道を、先人の知慧と工夫の「洗越し」や「石垣」を間近に見ながら約一時間、漸く頂上に到着した。
 熊野灘から吹き上げる涼風を受け眼下を見ると、小雨に霞んだ小島が点在、あたかも日本三景の松島を思わせる風情であった。
 下りは「明治道」を一瀉千里、アッという間に馬瀬に到着した。国道に合流する手前に公衆トイレがあったので借りる事にした。
 入ってビックリ、公衆トイレとは思えない清潔さである。掃除中のおばさんが『昔ハイカーに私の家のトイレを貸してたが、私が掃除する条件で町に造って貰った』とのこと。
 献身的に掃除をする姿に頭の下がる思いであると共に、「旅のトイレは使い捨て」と不注意になりがちな自身を顧みて恥ずかしくなった。いつも清潔なトイレを心掛ける馬瀬のおばさん、今後もお元気で頑張って下さい。
  始神峠       始神峠
始神阪険露根道  始神の阪険 露根の道、
石渠石垣歎巧造  石渠石垣 巧造を歎ず。
拭汗追涼纔到巓  汗を拭い涼を追い纔かに巓に到れば、
眼前景趣似松島  眼前の景趣
         松島に似たり。      始神峠
始神峠の険しい登りは樹の根が露出した道で、昔の人の洗越や石垣の巧妙な造りに驚嘆する。汗を拭きながら涼しさを求めて
 やっとのことで頂に着くと、眼下に広がる景色の趣は松島のようだ。

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