紀北の旅 作品集 紀北の旅 作品集 紀北の旅 作品集
紀北の旅 紀行文2004
紀北の旅
山川 進

尾鷲の町中 三重県北勢地方より約百五十キロを走ると海山町を過ぎ尾鷲トンネルを潜り抜ける。急坂を下る途中に尾鷲市が一面に広がると「ようやく着いた」と実感する。急坂を降り立つと国道四十二号線坂場信号交差点である。左折してガード下(JR紀勢本線)を通り抜けると市内に入るが、そのままに走ると海岸線に出る。塩と魚の干す匂いが心地よい。いつも魚市場へ行く。今日の水揚げは何だろうと心をときめかす。それは今日の食卓に上がる季節の肴に会うためでもある。期待の魚は「脂の抜けたサンマ」であった。今夜は「サンマ寿司」か「めはり寿司」それとも季節の食材を生かした新鮮な海鮮料理と思いをめぐらした。いまの時季に食べられるものを食べたい気持ちである。いまの旬は「サンマ寿司」か「からすみ」である。品定めをして市内の魚屋さんへと足を運んだが、町の魚屋さんは地元の人の魚があり、高級魚は少ない。疲れていたので、予約の民宿へ足を運んだ。地の人の方便は民情を感じさせる。「あいさつ」は関西弁でも「三重弁」でもない言葉である。ときどき言葉が分からないが、聞きなおしが出来るので安心する家族との対話です。
 尾鷲市には四十軒余の民宿があるが、この様な「安心」「信頼」「親切」が通じ合うのは間違いない。夕食の注文を聞かれたが「おまかせ」とした。でも「サンマ寿司」だけは注文した。味は「柚子の味」の特別注文をしたが気持ちのよい返事があった。時間通りの夕食であった。「民宿」の味は「地元の味」であり、賞味は格別である。心のこもった料理を頂くことが出来た。地元の有名な寿司屋の話を聞いた。夜の街には出なかった。
 朝の食事にも季節の魚が出て満足した。一泊二食で安いのには驚きである。翌日は「おわせ節」の名所へ足を運ぶこととした。土井の竹林、世界の椿園には感動した。
魚の豊富な事にも感動した。JR尾鷲駅から海岸へ歩いたが、漁師街の街並みで一歩市内に踏み込むと昔の面影を十二分に残している。まだまだ近代化はしていない。このままの町並みが「おわせ」を象徴していると考えます。物の値段も安い、人も親切であります。道を尋ねたが「わかりやすい」民情がある。「おわせ節」の大会があって全国からファンが集まると言われるが、納得できます。その時季にももう一度、いや四季を通じて尋ねたいものです。
 「熊野古道」が世界遺産に指定されて「訪れる人」が増えている様子ですが、一泊でもして「民宿」の味を味わって「人情」にふれると一段とこの地域のよさが味わえることでしょう。風景、景色、さまざまに移ろいますが、紀州の人は「素晴らしい」触れ合うことでその土地の善さが出てまいります。決してお世辞ではありません。言葉、表情でそれを感じて欲しいと思います。
今日一日、「おわせ」の日を楽しませて頂き感謝しております。
「中村山から中村山へ」愛を込めて「次に訪れる」ことを約束致します。

紀行文作品集2004 紀行文作品集2005 紀行文作品集2006
作品の版権はすべて「もてなしのさとづくり会議 人づくり部会」帰属しています。