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 第6回 みえ熊野学フォーラム  2006年3月19日
基調講演 講師の久保田先生
講師の久保田先生。独特の語り口調で、ペルシャから熊野へと続くお話を聞かせてくださいました。
  基調講演 「熊野が持つアジア的意味〜花の窟を中心に〜」
(以下の内容は、ページ作成者が聞き取ったメモに基づいてまとめた文章ですので、誤っている部分があるかもしれません。ご了承ください。)

多神教の宗教観が持つ意味とは?
日本の古い宗教世界がどのようなものか?という興味から研究をしてきました。古事記や日本書紀など文献資料が限られているので、古い歴史や宗教を知るためには、朝鮮半島や中国、東アジアにおける記述を見なくてはなりません。そういったものを調べていくうちに、東アジア、そしてインドへとたどり着いて、さらに中東・欧州へと広がっていきました。それらの世界では、「神は1人」という唯一神教的な考え方が強く、そういった人々の考え方に触れる中で、「宗教とは人間にとって何なのだろう?」ということを考えるようになったのです。
現在、たくさんの人が死ぬ事件が毎日のように世界中で起こっていますが、その背景には必ず宗教や民族の問題があります。私はこれまで、「宗教とは、人間を幸せにする何か」だと思ってきましたが、そんな悲惨な事件のもとに宗教があることを考えると、それも崩れていきました。そして、一神教という強いイデオロギーが世界中に存在する中で、自然の中の様々なものに神を感じる、生命に神を感じるという多神教の世界がどのような意味を持つのか、それを考えるようになったのです。

アジアから熊野へ
私は30年以上も熊野を歩いていますが、日本の宗教を考えるに当たって、熊野という土地は欠かせない場所だと言うことに気付きました。それは、アジアにおける多神教的世界を考えてきたとき、東南アジアや琉球と熊野が、自分の中で強くリンクしてきたということです。

◎「火」のこと
昨年の10月に「花の窟」の「お綱掛け神事」に参加したのですが、日本中にたくさんある神事の中でも、古代を呼び覚ましてくれる神事です。イザナミノミコトの墓だと言われるあの岩を見ていると、現代と古代の境界がそこにあるのではないかと思えてきます。
さてそこで、日本書紀にある、イザナミノミコトが火の神カグツチを産んで死んだという記述、そこにはどんな意味があるのだろうと考えました。「火」というものは、文化や産業の根本にあるもので、それが女神から生まれて、人間界に火がもたらされ、そして今の我々は、その火の恩恵を受けています。
火の神カグツチ、「火」は、人が生きるために必要なものですが、それを得るために女神の犠牲が必要でした。それは言い換えると、父親であるイザナキノミコトは自分の妻を死なせてでも火の神を生み出すことが必要だったということです。人間世界に火をもたらすために、妻の死というタブーを犯さなくてはならなかったのです。タブーを犯した結果どうなったかと言えば、その後に文化が生まれました。神の世界から続く人間の世界も、タブーを犯すことで新しく生まれてきたものと言えますが、ここでは、「タブーを犯して、火の神を生み出した」ということに大きな意味があると思うのです。
アイヌ民族の火の神も同じで、天上界と人間界の仲介をしてくれるという考え方があります。そんなキーポイントとなる「火」ですが、松明やたき火など火を目の前にすると、暖かみを感じると同時に火に対する恐れのような感情も抱きませんか?それはつまり、「タブーを犯して火を生み出した」という原始の罪の意識のようなものが、思い出されるからではないでしょうか。
もう少し広く見てみると、世界の宗教においても火は重要な役割を果たしています。ササン朝ペルシャにおいては国家統治のための重要なポイントとされていて、今のイランにある寺院には、1500年以上も燃え続けているという「聖なる火」があります。オリンピックの聖火もそのひとつだし、熊野には那智の火祭りもあります。

◎その他のつながり
熊野詣では、本宮大社−新宮(速玉大社)−那智大社という右回りが順番ですが、これはインドにある聖地巡礼と同じやり方で、聖なるものを常に右側に見ながら回る方法です。
また、本宮大社が明治の途中まであった大斎原は、3つの川の合流点にありました。水を聖なるものとして考えた日本人の考え方がそこに表れていますが、その聖なる水=川が合わさるところがさらに聖なるところだということで、あの場所が選ばれたのでしょう。インドでも、同じように川の合流点を聖地としている場所があります。その他にも、補陀洛渡海などインドから熊野へ入ってきたと思われる事柄がたくさんあるのです。
本当にインドから日本へ人が来たり、物事が伝わったりしていたのかと疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、静岡県の駿河という地名が良い例です。6世紀頃にインド人が船で黒潮に乗って駿河の沖を通ったときに、雪をかぶった富士山が見えて、「スワルガ」だと言ったことから、駿河という地名になっているのです。ちなみに「スワルガ」というのは、「天国」という意味です。こういった例を見ても、インドと熊野にはつながりがあるのではないかと思います。

◎お綱掛け神事とガルガン祭
話を熊野に戻して、花の窟のお綱掛け神事ですが、岩に綱を掛けてみんなで引いていく姿を見て、私はインドネシア バリ島にある「ガルガン祭」を思い出しました。このお祭りは、10m以上ある青竹に稲穂や花を付けてぶら下げるもので、そこに先祖の霊であるとか神様が下りてくると言われているものです。
そのガルガン祭の前日、その家の男子を浄化する重要な役割を担う人がいるのですが、その役割は集落にいる年配の女性と決まっています。女性には呪術的な力があると言われていることから、そう決まっているようです。これは、日本も含めてアジア一円にある女性が呪術的な力を持っているという信仰のひとつの現れでしょう。
お綱掛け神事で綱に季節の花がたくさんつり下げられているのを見ると、これはまさに「ガルガン祭」によく似ていると思います。お綱掛け神事でも、日本の母神であるイザナミノミコトの霊魂が、綱を通じて下りてくると言われています。そのためなのでしょうが、私が参加したときも地元の人に「あなたも早く綱につかまりなさい!」と怒られるような勢いで言われました(笑)。そうやって下りてくる霊魂によって、五穀豊穣など様々な祈りが実現するのだと言われているわけです。

◎スライド上映
(この後、話のあったイランの聖なる火、ササン朝の光明神、インドの神などがスライドで映されました。日本の仏像や観音様にある光背と同じものが、それらの神にも付いていることから、古代ペルシャ(ササン朝)に端を発した神の造形化が、インドを通じて日本へ伝わっていたのだという説明がありました。
また、綱掛け神事の画像と、ガルガン祭の画像も写され、青竹にぶら下がる花と、綱にぶら下がる花の様子が何となく似ていることが示されました。もっとも、会場内は、「う〜ん、そう言われればそうかなあ・・・」といった微妙な雰囲気でしたが。)

◎多神教的な宗教観
バリ島にあるヒンズー教の寺院には造形化された神はいくて、神は目に見えないものと認識されています。これは、自然の岩や海などいろんなものに神を感じる日本の感覚とも通じるところがあります。
私が言いたいのは、花の窟のお綱掛け神事と「ガルガン祭」が同じだという話ではありません。どちらも常緑樹の深い森に囲まれ、そこに川があり、海があり、風があるという場所での神事です。神が宿り、先祖が自分たちを守ってくれていると信じられていて、祭りの時には自分たちのところへ下りてきてくれると考えられているのです。そんな同じような基盤があるからこそ、自分たちを取り囲む多様な自然の中にたくさんの神々がいると感じる、多神教的な宗教観があるということです。

まとめ
現在、一神教的な考え方が大勢を占める世界観のもとで、たくさんの紛争が起こっています。そんな中で、熊野に象徴される多神教的な考え方であれば、「民族や宗教は違うものである」ということ、もっと言ってみれば「お互いに生命、お互いに命」ということを前提にした上でお付き合いができるのではないでしょうか。こういった考え方こそ、今の世界に必要とされているのだと思うのです。
花の窟、伝承されてきた聖地が、今の私たちにどんなメッセージを発しているのか、みなさんには是非それを考えてもらいたいと思います。
唯一神教的な直線的ともいうべき歴史観は、物事は常に前へ進んでいく、そのためには唯一神教的以外のものは排除するという考え方です。多神教は常に前へ進むのではなく、すべての生命が循環するという世界観です。すべての生命の存在を肯定する宗教観、これこそ、現代に一番重要ではないかと思っています。
 →フォーラムの内容を見る
  基調講演「熊野が持つアジア的意味〜花の窟を中心に〜」
  パネルディスカッション「世界遺産・熊野の風土と魅力を語る」
  感想

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